針葉樹

気付けば
蝉の声なんてもうきこえなくて
真白いここにまたひとりきりだよ

両手をついて
両膝を折って
無言のまま零れていく唾液
確かに溶かされていく冷たさ

凍り付く息のゆくえ
つまさきを濡らす涙
ねえ本当は
こんなにあたたかかったこと
まだおぼえていた?

きみなら天使になれる
誰かがそんなことを言っていた
そのことばをずっと畏れていた
冷静になんてなれないままで